「マユちゃんが彼の立場だったら、
もう会社辞めちゃうかな?」


「はい間違いなく。」


「素直でよろしい。

でも彼は希望を捨てずに頑張った。

“いつかお呼びが掛かる”。そう信じて彼はそこでもなんとか頑張り続けた。」


「・・・・・・・・・。」


「気付けば入社から20年以上が経ってたらしい。

40代になった彼の元に、
ついに“技術開発部”への異動辞令がきた。」


「・・・・・・・・・。」


「それでね・・・。

ようやく技術者として、エンジンの開発に取り組める事となった彼はそこで・・

ある【事実】に気付く。」


「・・・なんですか・・?」


「車のエンジンって、
たくさんの部品が使われてるでしょ?

だから何をどうすれば、
“画期的な革命”になるかって言うと・・

“どの部品をどう進化させて、それをどうエンジンの動力に繋げるか”っていう事になる。

だから彼は周りを圧倒するほどのスピードで技術開発を進められたんだ。」


「・・・それって・・もしかして・・?」


「うん。だって彼の頭の中には、
部品倉庫管理時代に培った知識が・・

この会社には今どんな部品が存在していて、

それら一個一個がどんな使われ方をしているかっていう知識が頭に叩き込まれていたからね。」


「・・・・・・・・・。」