「・・・・?」


「金も無い貧乏役者だったくせに、

一人前気取りでよく通っていたBarがあって・・・。」


「そこでもオーディションの話を?」


「マスターの他に、私と歳が近かったアルバイトの男の子が一人いて・・。

うんざりするような自慢話にもいつまでも付き合ってくれた。

あぁ・・・懐かしいなぁ・・・。」




参考までにお店の名前を聞いてみたが、
さすがにそこまで覚えてるわけもなく、

そのバーテンダーの名前も、

絞りに絞った記憶から、“コウちゃん”って呼んでた事ぐらいしか分からなかった。




「ヒデさん。他に何か聞いておきたい事は?」


『井浦新も出演してるんですね・・。』


「・・誰?さっきの、“何とか八犬伝”?」


『いえ、君が学生時代に観た映・・。』


「・・・・・分かった分かった。
話聞くからちょっと待って。」



ヒデさんが現実逃避する時は大抵、
動悸がする時。


そんで動悸がする時っていうのは大抵・・

あの安楽椅子さんの中で、
何かしらの【矛盾】が発生している時。



山本さんにお礼を言って別れたところで、
通信を再開した。