クローゼット番外編~愛する君への贈り物





「ありがとう、ジョッシュ…
こんなことになってしまったけれど、君にはとても感謝しているし、本当の息子のように思っている。
いつでも遊びに来なさい。」

「……ありがとうございます。」

俺は、真っ赤な目をしたシュミットさんと固い握手を交わし、屋敷を後にした。



彼女が亡くなってからのことは、ほとんど記憶がない。
覚えているのは、彼女があのウェディングドレスをまとって…
俺の編んだ花冠を付けて、棺に横たわっていたことだけ…
彼女はとても美しく、生気に溢れ、今にも目を覚まして、俺に笑いかけてくれるようだった。



今でも彼女の死が、信じられない。
いや…信じたくない。
人はこんなにもあっけなく死んでしまうものなのか…
ほんの少し前までは、いつも通りに笑っていたのに…



彼女の予感は当たっていた。
誕生日まで生きられないという不吉な予感は、当たっていたのだ。
そして、ウェルス医師の診立ても間違ってはいなかった。
奇跡は、ほんの一時のことだった。
俺は過信していたのだ。



シュミットさんは、言ってくれた。
たとえ短い時間でも元気になれたこと、俺に会えたことはミシェルにとって、何十年生きるよりも幸せなことだったと。
まだその言葉を素直に受け止めることは出来ないけれど…
トルスを離れ、モルドに行ったことが悔やまれてならないけれど…
俺は、現実を受け入れるしかないんだ。
過ぎ去った時をやり直すことは、誰にも出来ないのだから。



シュミットさんに、俺とミシェルの指輪をもらった。
それを二つ一緒にチェーンに通して、首にかけた。
この先、俺は誰かを愛することはきっとないだろう。



(ミシェル…俺の心はずっとおまえのものだからな…)



今はとにかくトルスにはいたくない。
あそこは、ミシェルの思い出が多すぎるから。
オルリアン城へ戻ろう。
何もなかったような顔をして…
彼らと一緒なら、きっと気が紛れる。



俺は顔を上げ、オルリアン城に向かって歩き出した。