クローゼット番外編~愛する君への贈り物





「ジョシュア…本当にありがとう。
あの子があんなに嬉しそうな顔をしたのは、久しぶりだよ。」

シュミットさんはそう言ったけれど、俺にはとても嬉しそうには思えなかった。



「ミシェルはなぜあんなに弱ってしまったんですか?」

「……すべては、私のせいだ。
私は、あの子には誰よりも幸せになって欲しかった。
だから、君と引き離した。
あの子が君のことを愛していることは知っていたが、君ではあの子を幸せには出来ない。
そう思ったから、引き離したんだ。
ちょうど、腕が良いという医者のことを知り合いから聞いてもいたし、すぐにその医者のいる町へ引っ越したんだ。」

辛いことだけど、それは仕方のないことだと思った。
俺みたいな薬屋の息子では、ミシェルに十分なことはしてやれない。
そのことはわかっていたし、わかっていたからこそ身を引いた。



「薬だけでも続けて欲しかったです。」

「……君の言う通りだ。
私は、その医者に掛かれば、ミシェルは今まで通り…いや、それ以上快方に向かうと信じていたんだ。
診察代も桁違いに高かった。
そのことがなおさら、きっと良くなるという期待に繋がった。
だけど、現実はそうじゃなかった。
ミシェルの体調は少しずつ悪くなっていった。
だけど、それは君と引き離されたせいだと…つまりは気持ちの問題だと思っていた。
そして、君のことを早く忘れるようにと、ミシェルを無理やり結婚させることにした。
そうすることがミシェルのためになるんだと、その時の私は信じていたんだ。」

シュミットさんは、顔を歪め、絞り出すような声でそう語った。