クローゼット番外編～愛する君への贈り物

「ここは、静かで空気がうまいこと以外は何もない、退屈な町ですからね。」

「そうなのか……」

部屋に入り、長椅子に腰かけた。
この町に、本当にミシェルはいるんだろうか？
正直言うと、今すぐにでもミシェルを探しに行きたい。
でも、もう日も暮れた。
それに…まずは、状況を探ってからだ。
シュミットさんにみつからないようにしないといけないし。



そうは思うものの、この町に来たことで、ミシェルに会いたいという気持ちはより強いものになっていた。
ミシェルと会えなくなって、モルドへ行って…
その間に長い時間が過ぎたというのに、俺の気持ちはこんなにも昔のままだったのかと、自分でも驚くほどだった。



（ちょっと出かけるか…）



この町には、一軒だけ夜遅くまで開いてる酒場のような食堂のような店があるとのことだった。
今日は早めの昼食を食べたっきりだったから、腹も減っていた。
それにちょっと酒でも飲まないと、今夜は眠れそうになかったから。



外に出ると、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
宿の主人に教えてもらった方向へ歩いて行く…その店は、窓から漏れる明かりのおかげですぐにわかった。