クローゼット番外編~愛する君への贈り物





(ここがマンソンか…)



一刻も早く辿り着きたくて、俺は馬車を雇った。
普段ならそういう贅沢はしないのだが、ミシェルのことを想ったら、歩くことさえもどかしく感じられたから。



馬車のおかげで、トルスを出て4日目の夕暮れには早くもマンソンに着いた。
薄暗く、周りの様子ははっきりとはわからないが、とりあえず、静かな町であることは確かだ。
少し歩くと、宿屋をみつけた。
何日滞在するかはまだ決めていないが、ひとまず泊まるところを確保することにした。



「部屋はあるか?」

「はいはい、ございますよ。」

宿帳に記帳していると、宿屋の主人が俺に話しかけて来た。



「お客さんは、どうしてここへ?」

「え?あ…あぁ、まぁ、気分転換っていうか…
気まぐれな旅行だ。
静かで良い所だって聞いたもんでな。」

宿屋なら、もしかしたらミシェルのことを知っているかもしれないと思ったが、でも、本当のことはやっぱり言えなかった。



「もしかして…なにか、辛いことでもあったんですか?」

「え?……何もないけど……」

おかしなことを聞く者だと思ったが、話を聞いてみると、ここに来る者の大半は、体か心を病んだ者だということだった。