クローゼット番外編~愛する君への贈り物





「……ん?あれ?今、何時だ?」

長椅子で眠り込んでいたエイダンが目を覚ました。



「まだ夜中だ。」

「え?あ…本当だ。」

柱時計を見て、エイダンが呟く。



「起こしてくれたら良かったのに。」

「いや、気持ちよさそうに寝てたから…」

「そうか…久しぶりに飲んだからな。」

エイダンは起き上がり、水差しの水を喉を鳴らして飲み干した。



「あぁ~…なんかすっきりした。」

「こんな時間に目を覚ましてもまずいだろ。
また寝たらどうだ?」

「なんだか目が冴えてしまったよ。」

エイダンは笑ってそう言った。



「あ、そういえば、昔、お前ん家に良く来てた貴族の娘…なんて言ったかな?」

「……ミシェルのことか?」

口にしたくない名前だったが、つい反射的に答えてしまった。
ごくなにげないふりをして…



「そうそう、ミシェルだったな。
最近、ハワードがマンソンで彼女を見掛けたって言ってたぜ。」

「マンソン……?」

「あぁ、なんだか具合が悪そうだったって言ってた。
あの子、子供の頃から体が弱かったもんな。
でも、けっこう元気になってたのに、急に来なくなったよな。
何かあったのか?」

「え…あ、あぁ、良い医者がみつかったとかで…それで、うちには来なくなったんだ。」

俺は咄嗟に嘘を吐いた。