クローゼット番外編~愛する君への贈り物

重い絶望感を胸に抱えて、俺は真っ暗な道を歩き続けた。
母さんに宿賃はもらっていたけれど、なぜだか泊まる気にはなれなかった。
一刻も早く、ミシェルのお屋敷から離れたかったのかもしれない。



シュミットさんは、本気だ。
俺とミシェルを完全に引き離そうとしている。
俺がここに来ても会えないように、ミシェルをどこかに連れて行ってしまった。



(俺は、諦めてるのに…)



ただ、ミシェルの体調が気になってるだけだったのに…



いや、それは嘘だ。
心の奥底には、ミシェルを想う気持ちがあった。
会いたいとも…ただ、遠くからみつめるだけでも良いから、ミシェルを見たいと思っていた。



けれど、それ以上のことは望んでいなかった。
諦めたということは嘘ではなかったんだ。
諦めないと、苦しくて生きていけない。
だから、ミシェルにも諦めて欲しいと思っていた。
彼女にも苦しんでほしくはなかったから。



きっと、ミシェルはシュミットさんに従わなかったんだ。
彼女はとても真っすぐな人だから。
そのことが却って仇となり、シュミットさんは意地になった。



(さようなら、ミシェル…
俺のことは早く忘れて…)



仰いだ空には、月さえもなかった。