クローゼット番外編~愛する君への贈り物





(……ミシェル……)



俺の予感は当たった…
いや、予想していたよりも悪いことになっていた。



薬がなくなる頃になっても、ミシェルはもちろんのこと、シュミットさんもお屋敷の使用人すらもうちには来なかった。
ミシェルに会えないことは辛かったけれど、それよりも彼女の体調のことが心配だった。
せっかく調子良くなって来てたのに…
母さんは、腕も良いけど、ミシェルのことを子供の頃から診ているし、その時々の体調によって薬の調合を細かく変えていた。
誰よりも、ミシェルの体のことを知ってる人だし、ミシェルを治せるのは母さんだけだと思ってた。



でも、薬を取りに来ないと言うことは、もうここのことは見限ったということだ。
そんなことをして、大丈夫なんだろうか?
母さんのほかに、ミシェルを助けられる人なんているんだろうか?
いや、そんな者がいるはずない。



(ミシェル…大丈夫なのか?)



俺は、心配でたまらなかった。
それは、母さんも同じようだった。



「ジョッシュ…あんた、ミシェルお嬢様のことが好きなのかい?」

「え?……そ、それは……」

「でも、わかってるよね?
うちとシュミット家では身分が違う。
あんたがいくらお嬢様のことを想っても、その想いは…」

「わかってるさ、そんなこと!」

俺はその場から駆け出した。
悲しくて、悔しくて…込みあがって来る涙を拭いもせず、俺は誰もいない夜の町を駆け続けた。