「大声で喋ってたぜ」

「…………」

「でその後校門で男と抱き合ってた」

「…………」

桜は片手を頭に当てる。

桃がいいならいいよ、もう泣くことがないなら、でもさすがにどうかと思うな、少しは周りの目を気にしようよ。

彼女が目の前にいたら絶対に言っていただろうに、今桜を見ているのはにやにやした宮沢だ。

そして彼は桜の気が緩んだ隙に、するりと扉をすり抜ける。

「あ、ちょっと!」

「お邪魔しまーす」

許可してない、と背中に叫ぶが、彼はすたすたとリビングに入っていく。

ああもうなんなの、と宮沢の靴を睨みつけた。揃えてあるのがそつがないというか小憎らしいというかいつの間に?