そこまで一気に言ってから、彼は照れくさそうに横を向く。

「多分俺、桃さんと桜さんのこと、無意識に違うってわかってました。なんででしょうね……だから、驚かなかったです、そのことには」

そのことには。

「桃さん、あのとき言ってくれたこと、信じていいですか?」

「……真面目な姉を説得して、全然知らない学校に乗り込んだんですよ」

なんとか紡いだ言葉は震えていた。桃は一度深呼吸して、目線を合わせてくれている牧野を見つめ返した。

「信じてください。好きです」

「抱きしめていいですか」

返事をする前に牧野は桃を抱き寄せた。

力強い腕に包まれると、もう一粒涙がこぼれる。

額を肩に擦り寄せて彼の背中に腕を回した。

抱きしめる腕の温かさを、桃はこれから先、幸せと呼ぶだろう。