「そんなの、俺もです。あなたに会いたかったんですよ」

「……なんで、会いにきてくれたんですか?」

「桃さん」

唐突な名前呼びに息が止まる。次いで、耳まで赤くなった。

「……って、呼んでもいいですか?」

「は……はい。紛らわしいですし……」

「俺は、桃さんが好きです」

恋しい男の口から放たれた言葉は、息だけでなく心臓まで止めた。

数秒硬直した後に動き出した心臓は、送り出す血の量がはるかに多い。

「好きです。本当ですよ、しかも俺も、一目惚れみたいなものです」

「なっ……」

「保健室で。あなたの優しさに。桜さんじゃなくて、桃さん、あなたに恋しました」