姉とは、桃の高校の最寄り駅で待ち合わせている。そこから数駅移動して、新しくできたカフェに行く。

パフェが待っている。その気持ちを頼りに足を動かす。

多分パフェを食べながら、また泣いてしまうのだろうけど。

涙を見せる相手は、今も昔も桜だけだ。

まだ人がまばらな昇降口を抜け、校門が近づいてきたところで、桃の駆け足は緩んだ。

校門の陰に、がっしりした体つきの人がいた。

髪は黒で、スポーツバッグを肩から提げて。

開いた文庫本に目を落としていた彼は、ふっと顔を上げて振り向いた。

「──関谷さん!」

ばっちり目が合って名前まで呼ばれては、桃にはどうすることもできない。わけもわからない。

いつから待っていたのだろう。ずっと立ちっぱなしで?