カタン、と音がした気がして、桜はうっすら瞼を開ける。

文字通り目と鼻の先に愛すべき双子の片割れの顔があった。

長いまつ毛が濡れているのを認めて手を伸ばす。

静かに触れると彼女の瞼が震えた。

ソファーに頭をもたせかけ、床に座り込んで眠っていたらしい彼女は、姉の顔を見て涙を盛り上がらせる。

「どしたの。桃」

「桜ちゃん」

「うん」

ゆっくりと体を起こしながら桜は相槌を打つ。

ソファーの前にはテーブルがある。その上に、湯気が立つマグカップが二つ並んでいた。

中身は紅茶らしい。母の仕業だろう。妖精のような人だから。