存分に笑ってから、桃はなんとか言葉を絞り出す。

「ま、牧野くん、こんなとこいていいの?」

「ちょっとだけ、抜けてきた。……関谷さんに会いに行こうと思ってたところ」

温かな目で見つめてそんなことを言うものだから、桃は頬に血が上るのを止められない。

「そ、そうだったの。……あのね、牧野くん、すっごくかっこよかったよ」

「ありがとう。……照れるな」

はにかんだ牧野がこれまたかわいくて、ああもうっと桃はバッグを抱きかかえる。

どきどきしすぎて心臓が壊れそうだ。

「……本当のことを言うと、見られてたから頑張った」

「……っ」

ぎゅうう、とバッグが潰れた。