試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、会場は沸き立って、たちまちかき消された。

芍薬は三点、無失点。堂々たる勝利だ。

桃は感動のあまり洟をすすりながら、目尻を指で拭う。

選手たちは揉み合いながら喜んだり悲しんだり、やがて整列の後に歩み去っていく。

試合中、牧野と目が合ったような気がしたのは、結局あの一回だけだった。

席を立って人混みに分け入る。

会えるかはわからないが、牧野に会いに行ってみようと思ったのだ。

階段を降りながらキョロキョロと辺りを見渡す。えーと、選手たちはどっちだろう。

「──関谷さん!」

「!?」

聞き違えるはずのない声が聞こえてきて、桃は階段を踏み外しかけるほど驚いた。

慌てて手すりを掴み体勢を整えるのと、顔色を変えた牧野が駆け寄ってきたのが同時だった。

「だ、大丈夫!?」

「ま、牧野くん!?」

二人分の叫び声が重なって、数秒間の沈黙。

続いて噴き出したのがまた同時。

笑いながら桃は、再び目尻に滲んできた涙を拭う羽目になった。