驚いたのは桜だけではなかったらしく、耳に刺さる甲高い声はしばし絶句していた。

数秒後に発せられた声は、不安定に揺れていた。

「……え、うそ、マジなんだ」

「わかったらはよ行け」

「待って、うちの学校の子?」

「他校だよ」

宮沢が追い払うような仕草をしたらしく、声の主の気配が消えた。

桜はまだ、俯いたままだ。

「じゃ、行くか。これ以上面倒なことは勘弁だし」

「……」

無言で立ち上がりながら帽子を被り直す。

よくわからないが、とりあえず顔を見せてはいけないような気がした。

宣言通り宮沢が奢り、二人は店を出る。