「なに、なになに、誰それ彼女!? こんなとこ二人で来て、デート!?」

言わんこっちゃない。

桜は俯いた。甲高い声は近づいてくる。

「宮沢、付き合ってる人いないって言ってたじゃん!」

「いいのかよ、お友達ほったらかして。びっくりした顔で見てるぜ」

「あー、追い払おうとしてる。じゃあガチなんだ!」

宮沢がため息をついたのが聞こえた。うんざりした色が露骨に混じっている。

「あたしのこと邪魔だと思ってんでしょ。うわーやなやつー」

「彼女とのデート邪魔されて嬉しい男は普通いないさ」

「……!?」

ガタッ、と机が鳴った。桜の動揺が伝わったのだ。

反射的に顔を上げそうになり、必死で堪える。

この男、今、なんて言った?