桜は目の前に座る男を、上から下までまじまじと眺めてみる。

ちょっとにわかには信じられない。

「……甘いものが好き?」

「うん。嫌い?」

「いや、好き……」

「だと思った」

目を細めて得意げに笑う顔はすごく気に食わないが、もう完全に脳は思考停止したので、ふわふわのソファに身を沈めた。

しばらくしてから運ばれてきたパンケーキは、生クリームの量が異常だった。

「……上手く食べられる自信ない」

「それはマシな方だろ」

「宮沢くんは自分でそれ選んだんでしょ」

彼がナイフを入れたパンケーキは驚くべきことに紫色で、生クリームもカラフルで、これでもかというほどデコレーションされていた。

ちなみに店員がそれぞれ逆の皿を置いていって、取り換えたのは余談である。