桃は芍薬高校の制服に身を包んでいた。

五月中旬、心配そうに離れていく桜は、桃が通う県立高校の制服を着ている。

本日、桃の願いが聞き届けられ、二人は入れ替わった。

今日この日まで、桃は桜に作法や勉強を叩き込まれた。

予習はばっちり。言葉遣いもばっちり。

あの日駅で見かけた、芍薬の制服を着た男子に直接会うためだけに、こんなことをしている。

ずっと鼓動が鎮まらない。

目を閉じれば、あの一瞬が永遠のように思い出される。