「……好きだ……」

熱に浮かされたように桃は吐息をもらす。

牧野はチームメイトにくしゃくしゃにされている。大きく拳を突き上げて──それは勝者だけの特権。

なんて格好いいんだろう。今、彼がフィールドの支配者だ。

きらきら、汗が弾ける。満面の笑みが。

桃の目には牧野しか映らない。どれほど離れていても、牧野を見失わない。

──目が、合った、気がした。

疾風のように駆ける彼と。いや、まさか、そんな。

桃が腰を浮かしかけたのと同時に、牧野が動いた。

桃に向かってまっすぐ拳を伸ばす。照れたような、けれど自信に満ちた顔つきで。

それは一瞬のことで、彼はすぐにボールを追いかけていく。

どくん、どくん、と心臓が脈打つ。全身が波打つ。

体中が熱かった。