「お。来たのか」

「……来たのか、とは……」

意外そうな顔を隠しもしない宮沢に、桜の表情が苦くなる。

文字通り駅前で、宮沢は桜を待っていた。

「いや、来ないかもと思ってた」

「……じゃあ帰る」

「待て待て。来い。もう電車出るぜ」

腕を掴まれ、改札に向かって歩いていくので、桜は慌てて定期を出した。

改札をくぐり抜け、そのままホームに停まっていた電車に飛び乗ると直後にドアが閉まる。

「ふー。ぎりぎりだったな」

「ごめん、ちょっと家出るの遅くなって」

「真面目だなあ、あんた」

呆れと感心を半分ずつ混ぜたような顔に、無性に桜の反発心が湧き上がる。