桃が自宅を出ていった。

だいぶ浮かれていたので事故などに合わなければいいけど、と思いながら、髪を結い上げる作業に戻る。

桃に嘘をついてしまった。出かける先は桃と同じなのである。

髪を必死でまとめているのは、変装のつもりだ……。

なまじ髪が長いので、まとめるのに手間取る。

悪戦苦闘してようやく結い終わったときにはもう、約束の時間に迫っていた。

優等生の習性として、相手が誰であれ約束を破ることはできないので、慌てて着替え始める。

ラフな黒のTシャツにシンプルなオフホワイトのパンツを合わせる。なるべく地味にしていく。

桃は服装を決めるのにやたら悩んでいたが、桜の基準は、今日においては動きやすい、目立たない、である。