「あのね。芍薬高校に通っているのは、私なんだよ」

「? うん」

「牧野くんと仲良くなった女の子は、“関谷桜”としての桃であって、“関谷桃”としての桃じゃないんだよ」

「…………」

桜の言葉の意味を理解するのに、桜が部屋着に着替えるまでの時間を桃はたっぷり使った。

それから恐る恐る言う。

「……て、ことは……」

「牧野くんは桃のことを、“関谷桜”だと思ってるってこと」

「………………。うっ……うそおおおおおお!?」

家中に響いた大絶叫の後、慌てふためき取り乱す桃を、数時間に亘って桜が宥めたことは、言うまでもない。