嫌な予感を覚えた彼は、宮沢仁という名らしい。

授業中、そう呼ばれていたので、桜は知った。

そして今、彼と二人で廊下を歩いている。

なんでこんなことに……!

桜と彼の手の中には、本日提出の数学のワークがある。

運んでくれと指名された。多分桃の成績のせいだ。

「……あのさあ」

「んっ?」

宮沢が喋った。桜は内心びくびくする。

「それで、あんた誰?」

ちらりと垣間見える鋭い視線に、桜の息が止まりそうになる。

「え……、関谷、桃だけど」

そう言うのでいっぱいだった。