予鈴に急き立てられて、慌ただしく入ってくる男子たちがいる。

こういうところは進学校でも変わらないんだな、と変な感慨を覚えた。

見るともなしに彼らを見て──その中の一人に目を奪われた。

……あ、れ……?

額に汗を滲ませて彼は椅子を引いている。

え、うそ、うそ。

いやでも、間違えようがない。

だってあのとき目に焼きつけた、ものすごくどきどきした、他校に潜入してでももう一度見たいと思った、あの──。

千人弱の人々の中で、こんなにあっさり出会えるなんて、運命なんじゃ……?

桃は本気でそう思った。

一目惚れした彼を視界に捉えたまま。