「桜ちゃん!」

ただいま、を言うより先に、玄関のドアが開く音を聞きつけた関谷桃が、リビングから飛び出してきた。

「桜ちゃん、桜ちゃん、桜ちゃーん!」

「なっ、ちょっ、危ない!」

靴も脱ぎかけなのに桃が構わず抱きついてきて、関谷桜は体勢を崩す。

「なに、どしたの」

「うっ、うう、あのね、あのね」

同じ年、同じ日、同じ時間に産まれおちたはずの妹だが、精神面が桜より幾分幼い。

ただ、姿形は鏡写しで、黙っていると親でさえ区別がつかないときもある。

自分と同じ栗色の長髪を持つ愛すべき双子の片割れはなぜか、同じく栗色の目を潤ませて桜を見つめている。