(父上様は──わたくしを最も効果的に使うことができる時期を待っているのよ。だから、わたくしに自由をくださらない……)

 お前の美貌にこころ動かぬものはおらぬ、と父は顔を合わせるとそればかり小宰相に告げていた。

 その静かな瞳の奥に野望の焔が燻っていたことを小宰相は敏感に感じ取った。

 とはいえ、中流階級の姫を持つ親ならば、そのような野望や望みを抱いてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。


 そして、第二の理由として、小宰相自身、通盛のことをよく知らなかったため、興味の持ちようがなかった。

 小宰相に愛を告げる男は数多いる。

 可憐な花の噂を聞きつけた男たちは、躍起になって恋の歌を送ってくる。

 小宰相が振り返らないことを知ると、男たちは次第に興味を失うか、あるいは更に恋情を燃え上がらせるかのいずれかだった。