あなたに捧ぐ潮風のうた


 そういえば、と通盛はあることを思い出した。

 小松家の会議に行って以来、宗盛には聞きたいことがあったのだ。

「宗盛殿。貴方は……平家のこれからについてどのような考えをお持ちですか」

「これからとは?」

 首を傾げる宗盛は、本当に質問の意図が分からないらしい。

 どうか、察してくれ、と通盛は叫びたかった。

 口に出すことが憚られるもので、通盛はしばし躊躇した。

「……その、もし、万が一ですが……重盛様が亡くなられることがあれば──」

「滅多なことを申すでない!」

 叱咤が空気を震わせる。

 通盛は、従兄が激怒することは予想していた。

 肩で息をする宗盛が鋭い眼光で通盛を睨むが、通盛はなるべく冷静に言葉を紡いだ。

「万が一と申したではありませぬか……。私とて想像することも恐ろしいことです。されど、平家のこれからを考えるために、僅かな可能性を考慮すること止む無し。重盛様の代で平家を潰えさせてはなりませぬ」

「……分かっておる」

 宗盛は苦しげな表情で瞼を閉じた。

 彼の葛藤が手に取るように分かった。