(あの父上もやはり孫の顔が早く見たいのだろう……。妹の子は藤原家の男子であるし……)
通盛は先ほどの父の顔と言葉を思い出していた。
北の方(正室)を娶るのは嫡男の義務である。
義務を果たさず家を潰すわけにはいかない。
そして、他の政治的な条件や個人的な事情に応じて側室を娶ることも必要である。
それが出来なければ、権力と欲望が渦巻く朝廷では生き残ることは出来ないだろう。
藤原摂関家や平家もそうやって勢力を拡大してきた。
婚姻とは戦略的に行われるべきものであるのは通盛も良く知るところである。
嫡男として、父の跡を継ぐ身として、いつまでも子供の様に駄々をこねてはいられないことは百も承知しているが……。
(……妻子、か……)

