苦笑いをしてお茶を濁す通盛の策は、父にはお見通しのようだった。
「何を申す。そなたはニ十四ぞ。普通ならば子の一人や二人、居て当然。寧ろ、遅いくらいだ」
身を乗り出して説得する教盛は、子供の悠長な様子に焦っているようだ。
だが、当の本人である通盛は、軽く首を横に振ると、穏やかな微笑を浮かべてそっと語り出す。
「責任は承知の上です。ただ、私はまだ妻を娶る気はございません。たとえ、父上が手頃な妻をあてがおうと、今は意味の無いことですよ」
柔らかで、まるで諭すような笑みを浮かべながらも確固たる意志を持っている通盛に、教盛は言葉に詰まったようであった。
通盛のことをよく理解している父だからこそ、通盛の意志は変わらないということを理解しているのだ。

