門脇家全体が、嫡男通盛の子供を心待ちにしており、父教盛は縁談を断り続ける通盛に気を揉んでいた。
これまで、父はなるべく通盛の意志を尊重して無理に婚姻相手を用意しなかった。
だが、通盛の年齢的に、そして朝廷内において政治的に堅固な地位を築くために、父は痺れを切らしたらしい。
「通盛よ、早く世継ぎをもうけて私を安心させてくれぬか。それが親に対する孝行であろう」
父の部屋に出向くと、彼は間髪入れずに本題を切り出した。
「父上、簡単に仰いますね」
通盛は小さく微笑んで肩を竦めた。
父が気を揉んでいる大切な問題であるのは承知の上だが、「またその話か」という気持ちは否めなかった。

