あなたに捧ぐ潮風のうた



 出家したとはいえ、清盛という男は修行僧のように人目を忍び、仏道のみに専念するということはないらしい。

 常に新たなものを開拓し、平家に変革と利益もたらしている。

 それが、彼らしいといえば彼らしいのだが。

 清盛が帰ると、平家の者達はそれぞれ重盛に見舞いの言葉や品を差し上げた。

 そして、重盛の体調に障らぬように二言三言会話を交わし、後ろ髪を引かれるようにして去っていった。

 通盛はというと、邪気を祓うとされる菖蒲の煎じ薬を渡した。

 以前、これを飲んだとき、確かに心に巣食う病魔を退治出来そうだと思ったのだ。

「……ああ、そうか。世の中は端午の節句なのだな」

 煎じ薬を受け取った重盛は、一瞬翳のある切なげな表情をした。