あなたに捧ぐ潮風のうた


 もしや、重盛は病を克服したのではないかという希望が芽生える。

「父上にはご心配をお掛けしました。しかし、父上は出家した御身。いつまでも父上の庇護の下生きていては、平家の未来は潰えまする。これからは、我ら自身が平家を盛り立てていかねばなりません」

 重盛は真剣な目をして清盛に訴えた。

 長い沈黙の末、清盛は「……分かった」と答え、仕方がないと言わんばかりに盛大なため息をついた。

(重盛様は本当にご立派な方だ。あとは、重盛様が病を克服し、再びお元気になられれば……)

 清盛は最後まで重盛を気にしていたが、福原で交易についての会合があるとのことで急ぎ戻らねばならないそうで直ぐに帰宅の途についた。