「わしがその責を負い、政界に復帰する」
その言葉に皆が素早く視線を交わす。
言いたいことは皆同じのようだ。
清盛が隠居生活を送る福原から六波羅に戻り、政に参加することはとても心強い。今の平家には清盛のような強い主導者がいないからだ。
だが、後白河法皇との折り合いが悪い清盛には不安がある。
折角重盛が平家と朝廷の関係を穏便に修復したにも関わらず、それが無駄になるのでは、という不安が拭えない。
「その必要はございませぬ」
凛とした声がその曇った広間の沈黙を破った。
「重盛! 寝ていなくて良いのか!?」
「ええ、今日は随分体調が良いのです」
その微笑みに嘘は無さそうだった。
平重盛は病人とは思えぬ堂々とした姿だった。
頬は少しこけていたが、顔の線が鋭角的になったり、髭が伸びていたりと、男らしい魅力が増していた。

