ある意味で重盛は平凡なのだ。彼は品行方正で優し過ぎた。
一方の先代の清盛は、一門繁栄のために手段を問わず、非常に政の才能に恵まれた非凡な人間であったということである。
これまで清盛が一人で軽々と背負っていたものを、重盛は身体を痛めながら何とか持ちこたえていた。
だが、とうとう限界が来た。
それがこの結果だ。
「腕の良い医官は呼んである」
「重盛様が臥せておられる間は、我らが重盛様を補うほどに働こう」
「そうだ、端午の節句で頂く菖蒲や薬を重盛殿に差し上げよう。きっと体調が良くなられるに違いない」
皆、口々に重盛のことを心から案じていたその時──。
「わしだ、清盛である。誰か出迎えに来ぬか」
屋敷の入り口から聞こえてきた声に一同に緊張が走った。

