戦争とは、過去を見てもいつの時代にも存在し、未来にも存在するものだろう。敵対する者達が各々の大義を掲げて刀を交える。戦いに勝利しなければ大義は打ち滅ぼされてしまうのが世の常だ。

 清盛の死後、平家の棟梁の地位を継いだのは宗盛だった。

 その宗盛の指示により、平家方は在地の協力的な勢力を含めて数万もの大軍を用意した。

 対する木曽義仲と名乗る者の軍勢は、在地の者の報告によると一万にも満たないという。

 この戦に負けるつもりなど平家には毛頭ない。その義仲とやらの頸を手に都に帰ると意気込む者がほとんどである。

 平家軍が先ず入った越前国では、在地の敵対勢力が籠城する火打城を包囲し、城を落とすことに成功した。

 たが、ここで止まるわけにはいかない。
 平家に刃向かう者を打ち倒すまでは。

 通盛は汗を拭ってもう一人の大将軍を振り返った。

「維盛殿、先遣隊を派遣しましょう」

 通盛は越中に進軍してくるであろう義仲を討ち取るため、先遣隊を出すことを維盛に提案した。

 細面の彼は、落城した火打城を見つめながら静かに頷いた。