小宰相は通盛の北の方(正室)として六波羅の一角に新しく作られた屋敷に迎えられることになった。六波羅蜜寺と門脇家教盛邸のちょうど間に位置する広々とした屋敷だ。

 実家の屋敷は遠縁に贈与し、乳母の呉葉や義則などの昔から仕えてくれた親しい家人たちは通盛の屋敷で働くことになった。

 小宰相は上西門院の女房を辞することを決めた。それは、小宰相が少しでも通盛の側にあることを望み、通盛もその意思を歓迎したからだった。

 婚姻を機に女房を辞める女達は多い。

 上西門院の御所に参って辞職を申し出ると、上西門院はすでに分かっていたかのように「わかった」とそれを許した。

 これまで、小宰相を引き立ててくれた礼を述べると、女院は微笑んだ。上西門院がいなければ、通盛と小宰相が結ばれることは無かっただろう。

 次に、友人の安芸に伝えると、思いもよらないことに彼女は袖で目元を押さえた。

 何も泣くことでもあるまいと彼女を慰めた。彼女は「ようございましたね」と泣き笑いを浮かべて喜んでくれた。彼女は、小宰相の父が亡くなった際によく心配してくれていたので、良い報告を聞いて安心したのだろうか。

 他の女房達も快く祝ってくれて、小宰相はほっと胸を撫で下ろした。