本家の屋敷に着くと、既に平家の者たちが顔を揃えていた。

 皆一様に顔色が良くなく、中には涙を流しているものたちもいる。

 通盛は自分の然るべき場所に腰を下ろし、菊王丸は他の侍童と同様に下がっていった。

 通盛の一つ下座には、無表情のまま瞼を閉じている教経が座って身動ぎすらしない。

 まるで眠っているような彼は、通盛が隣に座った瞬間、気配を感じたのか目を開けて視線を寄越してきた。

「兄上、いささか遅くいらっしゃったようにも思いましたが、如何なされましたか」

「いや──少しな……」

 道中気分が悪くなり一度牛車から降りて体を休めていたとは言えず、通盛は言葉尻を濁した。

 親しかった従兄の死は、自らが思うより大きな衝撃であったらしい。

 ただ、弟に情けないと思われるのは兄としての矜持が許さなかった。

 通盛は表情を引き締めると、重盛の父にして平家と朝廷の実権を握る清盛に目を向けた。