「重盛……」

「……父上、平家をお頼み……申し上げます」

「……分かった」

 老いた父の手を弱々しく握り返した重盛は、安堵のため息を吐く。

 言うべきことは言った、というようにゆっくりと閉じられる瞼を認めた通盛は思わず唇が震えた自分を戒めた。

 哀れな従兄が、ようやく安楽の浄土に参られるのだから。

 一門の願いも空しく、重盛の手は力無く床に落ち、清盛を始め一門からはすすり泣く声が漏れた。