「私は以前、神に祈りました……。平家の子孫が今後繁栄するならば……父上がもっと心穏やかにお過ごしできるように……。繁栄が我らの代までならば、我が寿命を……縮め給え、と……」
思わぬ息子の言葉に、清盛は息を呑み目を見開いた。
重盛は父の顔を見て消えてなくなりそうな微笑みを浮かべ、清盛の頑なに握られた拳にそっと触れた。
「……結果はご覧の通りです。もはや……疾く死んでしまいたいと……思う事すらありました」
静かな声音だが、聞く者の心に突き刺さる言葉だった。
罰の悪さを感じたのか、清盛は息子の手を握って縋り、背中を丸めて肩を震わせる。
そこには、偉大なる権力者の姿はなく、ようやく息子を省みた父の姿があった。

