父が天皇家のために尽くし、その結果、身分と地位を手に入れると、平家は他の貴族から目の敵にされてしまった。
肝心の天皇家からは政権を危ぶむ存在だと疎まれてしまい、後白河法皇は”鹿ヶ谷の陰謀”で父の暗殺まで企てていた。
──悲しいことだ。
どうして、忠誠を誓っている相手に憎まれねばならないのか。
重盛には父清盛の気持ちが痛いほどに分かった。
平家は偉大な父あってこそ。それは一門を始め、多くの公卿と貴族が認めていることだ。
それは父自身も知っている。
だからこそ、父は一族郎党を路頭に迷わせないよう、自分がこの世を去るまでに平家の地位を盤石なものにしたいと考えているのだ。
父は顰蹙を買うことを厭わず、娘に皇子を産ませ、次期天皇につけることで平家を守ろうとしている。
今の重盛というと、父に平家棟梁の責任を押し付け、やらねばならないことから目を逸らし続けている。
ただ、若き父の背中を追い求めているのだ。
──記憶の中にいる、朝廷に忠義を尽くす心優しい父の背中を。

