いつも以上に荒々しい翔琉の声に病室の中へ入ると美幸ちゃんの悲鳴が聞こえた。刃物を振り回している男が窓を割ったのだ。状況を掴めないでいると、男を挟んで向かえにいる翔琉と目が合った。すぐに逸らされたけれど、たぶん看護士の言う通り病室から出ていけと言いたいのだろう。

「おじさん、落ち着きなよ」

「探したよ・・・、僕の天使・・・」

「天使でも何でも良いんだけどさ。手から血が出てるよ。ガラス刺さってるんじゃないの?」

優しいねとか何とか言っていたけどそんな事は知らない。取り敢えず手に持っている刃物を置いてもらって、身の回りの安全を確保したい。私と翔琉は慣れているけど、特に美幸ちゃんは耐えられないだろうから。