真剣な表情で考えてくれた後、彼女は思い出すように口を開いた。

「・・・屋上に行きたい」

「この病院の?」

病院の前を通り掛かった時に夕日が綺麗だという事は知っていたらしいんだけど、病院の前じゃ建物が邪魔で上手く撮れなかったらしい。でも、病室は正門とは反対にあるから撮れるわけもない。だから、屋上なら上手く撮れるかもと思ったそうだ。
一人で撮りに行けなかったのは昨日の今日だから一人で歩くのは控えてほしいと医師に言われたかららしい。俺は彼女を車椅子に乗せて屋上へと向かった。外の風はまだ生暖かくて夏と言うには早い時期だけど、彼女は少し震えていた。体も細いし寒いのかと思って上に着ていた運動着を肩に掛けると彼女はありがとうとは言ってくれたものの、また誰にでもするんでしょうと言ってきた。