過ぎた時間は違っても

背中を擦りながら大丈夫かと問いかける事しか出来なかった。彼女も口では大丈夫と言っていたけれど、痛むのか傷口を押さえる腕に力がこもっていた。傷口を押さえる手に俺の手を重ねると、彼女はやっと笑いが引いていった。

「ごめんなさい。バカにした訳じゃないの。・・・ただ、私の家族ってこういう事に慣れすぎてこの程度の傷じゃ心配しなくなっちゃって。・・・だから、君が心配してくれたおかげで普通は心配してくれるんだよなってね。・・・ごめん、重たい話しちゃったかな?」

「君の笑顔が見れるなら俺はどんな話も聞きたい」

翔琉先輩が朝、俺を睨んだのは無駄な期待を持たせてしまったからだったんだ。俺が守れるかもしれないなんて言ったから、今回は怪我をせずに済むかもしれないって思わせてしまったんだ。