まぐれでも何でも良いからこの勝負に勝ってもう二度と目立たせない事を約束してもらおう。そう思って頬を軽く叩いて横髪を耳にかけた。彼は嬉しそうに笑うと先程よりも早く、高度にリングを狙ってきた。
負けられないという思いが私の背中を押してくれたのかもしれない。彼も本気を出しているはずなのに先程よりも簡単にボールを奪う事が出来た。でも、やっぱり本気なんだとすぐに思い知らされた。自分のリングへ戻る早さが先程と比べ物にならなかったんだ。
リング下から狙うのは高さで負けてボールを取られる危険がある。でも、抜けないからと無謀に投げ入れるのも圧に負けて失敗してしまう気がする。
リングを守る彼を抜いて下へ行くか迷っていた時だった。彼の一瞬の隙が見えたんだ。私はその隙を利用して彼を抜き、ボールを手に持ったままリングの中へ入れた。
やっぱり今日は異様に体が軽いと思いながら、私は彼との勝負に集中していたんだと感じた。