藍は足を止め、星が見え始めた空を見上げる。空を見上げている間は、胸にある重く抱えたものも忘れることができるのだ。

「……藍」

空を見上げていた藍は、急に肩を掴まれる。藍の口から悲鳴が漏れ、相手は慌てて藍の口を塞いだ。肩を掴んだのは、如月刑事だった。

「大輔、どうしたの?」

藍が訊ねると、如月刑事は頰を赤く染めて言う。

「……その、お前が現場に来ないのは初めてだったからな……。少し、心配で……」

「ありがとう、わざわざここまで来てくれて」

藍は優しく微笑む。月明かりが、藍の優しい表情と如月刑事の赤い顔を照らす。藍の唇がゆっくりと動いた。

「ここまで来てくれたもの、夕食をご馳走するわ。大したものは作れないけど……」

如月刑事の顔が喜びで染まる。藍の手を包み、何度も「いいのか!?」と訊ねた。

「もちろんよ。少し材料を多く買ってしまったから……」

藍がそう言うと、如月刑事は「貸せ」と食材がたくさん入って重いエコバッグを片手に軽々と持つ。

「俺が持つ」

「ありがとう」