「まず、お渡ししなければならないものがあります」

藍がそう言うと、大河が赤いリボンのついた箱をテーブルに置く。大野和美と大野花凛は、その箱を不思議そうな顔で見つめた。

「これは、三郎さんから花凛さんへの贈り物です」

藍がそう言い、大野花凛は箱を恐る恐る開ける。

「は?これって?」

箱の中には、バラをモチーフにした人気ブランドのネックレスが入っていた。突然の高価なプレゼントに大野花凛は戸惑っている。原刑事が言った。

「このネックレスは、三郎さんが施設を抜け出して買いに行ったものです。あなたに直接渡すためにこの街のショップに行ったんだと思いますよ。そして、黒山が三郎さんを轢いた時に金になりそうだったために盗んだそうです」

「は!?あのジジイ、認知症なんだけど!覚えてるわけないじゃん!!」

「稀に昔のことを思い出すケースもあるそうです。例えば、昔の写真を見たり、昔よく聴いた音楽を聴いたり、昔の話を聞くことで記憶が蘇ることがあると聞きました」

戸惑う大野花凛に聖が静かに言う。藍が口を開いた。