その時、如月刑事のスマホに電話がかかる。「霧島藍」という表示を見て、疲れ切った如月刑事の顔に微笑みが生まれた。

「もしもし?」

如月刑事が胸を高鳴らせながら電話に出ると、「今、時間は大丈夫かしら?」と藍の珍しく落ち着きのない声が聞こえてくる。

「どうした?」

「調べてほしいことがあるの」

藍から大野三郎が施設を抜け出した理由の推理を聞き、如月刑事は「そんなことあるのか?被害者は認知症だろ?」と聞き返す。

「昔の写真などを見ることで、過去のことを思い出すことがあるそうよ。三郎さんは、ネックレスの話を聞いて思い出したんだわ」

「まあ、こっちの捜査は行き詰まっているから進展になるかもしれんが……。現場にネックレスは落ちていなかったぞ」

「犯人が持ち去ったのかもしれないわ」

事件についての話だったが、如月刑事の胸には藍と話している嬉しさなどがある。

「わかった、とりあえず調べてみよう」