その神社は、財産に恵まれる神社として、女性雑誌にも紹介されていた。
しかし、主祭神は大黒様なので、合格祈願も出来るし、縁結びの願いも叶う。
だから、僕たちはその神社にもお参りした。黒田さんが何をお願いしたのかは
分からない。
聖神社の急峻な階段を下りて、山道に出ると、さすがに国道から外れて来て
いるので、一段と木立が深くなり、木々の梢のあちこちで、小鳥の囀(さえ
ずり)が夥(おびただ)しくなった。山道では、僕は黒田さんと二人きりなの
で、小鳥のように軽やかな足取りで歩いた。どちらから求めた訳でもないのに
自然に手を繋いで歩いていた。当てもなく歩いていくと、湧き水で出来た小さ
な滝があって、そこから小川が流れていた。さらさらと軽やかな水の流れに沿
って歩いて行くと、木々の木陰に囲まれるようにして泉が見えてきた。
